Kama Hopkins × Keao Costa 対談 第5話|Aulaniで、人生の学びがひとつの仕事に集まった

Kama Hopkins × Keao Costa Hawaiian Music Archive Chapter 5

Hawaiian Music Archive / Chapter 5

Aulaniで、人生の学びがひとつの仕事に集まった

Kama Hopkinsさんの話は、最後にAulaniへ向かいます。 日本で仲間たちとCDを作ろうとしたこと。パンデミックで動きが止まったこと。そこから、Aulani, A Disney Resort & SpaでHawaiian Cultural Advisorとして働く現在へ。 この章で語られるのは、単なる職場紹介ではありません。音楽、家族、コミュニティ、教育、公共機関での経験が、ひとつの仕事に集まっていく話です。そして最後には、「共有しなければ、灯は消えてしまう」という、Hawaiian Music Archive全体にもつながる大きな言葉が置かれています。

企画: アロハケーキ株式会社 / 代表 日下貴博
聞き手: Keao Costa
出演: Kama Hopkins / Ka Leo Sakura / Holunape
構成・編集: Lani Records

日下貴博

企画原案のご挨拶

日下貴博より

皆さんこんにちは。
日下貴博です。

私が20年以上ハワイの音楽を続けて、その中でたくさんのハワイのミュージシャンやクムフラにお会いして、素晴らしいリレーションシップを持つことができました。

普段の会話の中からも、ハワイの方々の文化に対する深い考えや、勉強になる考え方を伝えてもらえることが多々ありました。

私が直接のスピーカーになるよりも、本人たちの声をそのまま届けられるかと思い、このような企画を考えてみました。

ハワイを愛する皆様が楽しんでいただければと思います。

対談動画


日本語字幕とEnglish subtitlesを選んでご覧いただけます。

Chapter 5は、少し意外な入口から始まります。

Kamaさんは、Takaさん、Nickさんと日本で何度か演奏した経験を振り返ります。一緒に音を出してみると、いいつながりがあり、楽しく、うまくできる。そこから「CDを作ろう」という話が生まれていきます。

きっかけのひとつは、Hālauの人たちが必要としている曲でした。よく踊られ、よく演奏されるフラ曲。日本だけでなく、ハワイ、カリフォルニア、メキシコでも知られているような曲。そうした曲を、どう手に入れればいいのか、どの録音を使えばいいのか分からない人たちがいる。

それなら、自分たちで録音しよう。

Kamaさんの語りには、そういう実用の感覚があります。音楽を「作品」として作るだけではなく、踊る人、学ぶ人、現場で使う人のために録音する。そこに、Lani Recordsが扱ってきた教材化やアーカイブ化の感覚とも重なるものがあります。

この流れの中で、Kamaさんは「Sakura Kau Mai I Luna」についても触れます。日本への思い、TakaさんとNickさんとの関係、そしてKahauanu Lakeから受け取った教えや歌い方、演奏のリズム感。そうしたものが重なって、曲の中に入っていったように語られます。

曲名や制作時期の細部以上に、この場面から伝わってくることがあります。

Kamaさんにとって、日本との関係は「海外で演奏した思い出」だけではありません。曲を作る動機にもなり、Hālauや学習者へ音源を届ける構想にもなっている。Chapter 5の最初には、その接点が置かれています。

CDの録音を進め、外へ出てリリースしようというタイミングで、2020年が来ます。

パンデミックです。

外へ出て、CDをリリースして、演奏しに行く。準備はできていた。けれど、時代が止まり、仕事の事情も重なり、Kamaさんは思うように動けなくなっていきます。

その流れで話は、現在の仕事へ移ります。

Kamaさんは、Aulani, A Disney Resort & SpaでHawaiian Cultural Advisorとして働いていると語ります。そこでの仕事は、ハワイ文化ができる限りふさわしい形で表されるように手助けすることだと説明します。

ここで大切なのは、KamaさんがAulaniを単なる職場として語っていないことです。

音楽の背景。ハワイ文化の背景。コミュニティづくりの経験。教育の経験。公共機関での経験。それらが、この仕事に就くうえで強みになったと語ります。

Kamaさんの最初のキャリアは、教師だったそうです。その後、Office of Hawaiian Affairsで働き、Queen Liliʻuokalani Trust / Queen Liliʻuokalani Children’s Center、Hawaiian Homes Commission、King Lunalilo Trustなどにも関わってきたと語ります。

日本の読者にとって、これらの組織名はすぐには馴染みがないかもしれません。けれど、ここで見たいのは肩書の多さではありません。

Kamaさんは、音楽家としてだけではなく、人と地域、制度と文化、家族とコミュニティの間に立ってきた人でもある。Chapter 1で見た家族と音楽のルーツ、Chapter 2で見た日常の中にあった音楽、Chapter 3で見た歌と記憶の継承、Chapter 4で見たフラのための音楽ディレクション。それらが、Chapter 5では「文化をどう場所に宿すか」という仕事へ集まっていきます。

Kamaさんは、Aulaniでの仕事について、忙しいけれど楽しいと語ります。そして、自分がどこから来て、どこで学んだのかを忘れない、と続けます。

対談から短く取り出すなら、この部分はこうです。

人生で学んできたすべてがここに集まり、この仕事をする助けになっています。

そして、そこから話はさらに深くなります。

Kamaさんは、学んだことを共有しないまま去ってしまったら、それはもったいない、レガシーを残せない、と語ります。

ハワイ文化の中では、kūpunaがすべてを共有したがらない時代もあった。大切なものを守るために、秘密にしておくこともあった。それは、その人たちに委ねられていた。

けれど、今は違う時代を生きている。

ハワイ語やハワイ文化が消えてしまうかもしれないという危険を、今の世代は知っている。だから、できるだけ多く、できるだけ頻繁に、届く相手に共有する必要がある。

この言葉は、Hawaiian Music Archiveの中心にも置きたくなります。

共有しなければ、灯は消えてしまう。

これは、Kamaさんの発言を日本語として整えた短い引用です。この章の核はここにあります。

音楽を録音すること。話を残すこと。日本の学習者に届けること。Aulaniという場所で、文化の意味を来訪者に伝えること。形は違っても、どれも「灯を消さない」ための仕事です。

対談の終盤で、KeaoさんはAulaniそのものについて質問します。日本の人たちが十分に知らないかもしれない「敬意」や、建物・場所に込められた考え方についてです。

Kamaさんは、Aulaniという名前について話し始めます。

Aulaniは「首長の使者」と説明されます。首長とは、高い力、権威を持つ存在。そしてAulaniにおける首長は、ミッキーマウスではなく、ハワイ文化なのだと語ります。

ここはとても印象的です。

ミッキーはここでは訪問者です。

この一文だけで、Aulaniの見え方が変わります。

Aulaniは「ハワイにあるDisney hotel」ではなく、「ハワイ文化に携わる人々とWalt Disney Imagineersが設計した、DisneyによるHawaiian hotel」だとKamaさんは語ります。

この違いは大きいです。

「HawaiʻiにあるDisney hotel」と言うなら、ハワイは背景になります。美しい海、南国の雰囲気、観光地としての装飾。その中にDisneyのホテルがある、という見え方です。

けれど「Disneyが設計したHawaiian hotel」と聞くと、中心にあるものが変わります。土地、水、方角、言葉、工芸、物語、人、そして文化。その中心にあるものを、Disneyの技術や空間設計がどう支えているのか、という見方になります。

Kamaさんは、Aulaniの空間をʻahupuaʻaとして説明します。

ʻahupuaʻaは、山から海へとつながる伝統的な土地・資源管理の単位として知られます。水源から水が流れ、植物や命が養われる。自然の境界を持ち、山と海が切り離されずにつながっている。

Kamaさんの説明では、Aulaniのロビー、外へ流れる水、魚、植物、人々の動き、2つのタワーが、そのʻahupuaʻaの物理的な表れとして見えてきます。

Kamaさんは、ロビーの上部にあるMakaʻalaという名にも触れます。Makaʻalaには、目を開き、周囲に気づいているという意味がある。そこを山の頂として見立て、そこから水源が流れ、Waikolohe Streamとして命を養っていく。

そして、ʻEwa TowerとWaiʻanae Towerが自然の境界のように立つ。高い視点から見ると、Aulani全体が「生きて息づくʻahupuaʻa」のように見える。

ここで、読者として受け取れることがあります。

文化は、説明されなければ見えないことがあります。

同じロビーを歩いていても、何も知らなければ「きれいなホテル」で終わるかもしれない。でも、そこに名前があり、意味があり、水の流れがあり、kapaのデザインがあり、土地の考え方があると知ると、見えるものが変わります。

Kamaさんは、部屋、廊下、ロビー、上を見上げた場所、kapaのデザインに至るまで、意味を持つものがあちこちにあると語ります。そして、来られる方には案内して、ハワイ文化が意味することをもう少し共有したい、と話します。

ここでまた、Chapter 5の最初に戻ってきます。

日本でCDを作ろうとしたこと。Hālauや踊る人たちが使える音源を考えたこと。パンデミックで止まったこと。Aulaniで文化の表現を支える仕事をしていること。学んだことを共有しなければ、灯が消えると語ること。

全部が、ひとつの線でつながっています。

文化は、眺めるだけでは残らない。

歌う。録音する。学ぶ。場を作る。説明する。次の人が触れられるようにする。

Lani Records / Hawaiian Music Archiveがこの対談を日本語で残す意味も、そこにあります。

Kamaさんの人生をたどると、ハワイアン音楽は「音楽」だけではなくなります。それは、家族の記憶であり、友人との学びであり、一つの学校では終わらない知識であり、歌わなければ消えてしまうものです。そして最後には、空間の中にも宿すことのできる文化として見えてきます。

共有しなければ、灯は消える。

だからこそ、語る。

だからこそ、残す。

だからこそ、次へ渡す。

補足・訂正について

この記事は、Kama HopkinsさんとKeao Costaさんの対談動画をもとに、Lani Records / Hawaiian Music Archiveが日本語読者向けに再構成したものです。本文は逐語訳ではなく、対談の流れと意味が伝わるように編集しています。

表記、固有名詞、文化的な説明について訂正や補足がある場合は、Lani Recordsまでお知らせください。必要に応じて本文へ反映します。

English note for Kama and Keao: This article is a Japanese editorial adaptation of the Chapter 5 conversation. If you notice any correction regarding names, roles, Hawaiian terms, or cultural context, please let Lani Records know and we will update the article.